【数学2B】ベクトル、三角関数きなさいよ!数学2Bのはじめから解説勉強法

はじめに

数学受験の高校生の多くがつまずく壁が数学2Bです。

過去5年の旧センター試験、共通テストの数学1Aの平均点が62.1なのに対して数学2Bが50.5(どちらも100点満点)ということからも、数学2Bの難しさがわかります。

しかし、数学2Bが難しいのは扱う内容そのものだけではなく、勉強法に問題があるのかもしれません。

あなたは難しい単元を攻略するためには、難しい問題を解かなければいけないと思っていませんか?

ベクトルや三角関数、微分積分など抽象的且つ複雑なものを扱うときこそ、シンプルな問題を使って基礎から勉強していくべきなのです。

共通テスト対策にも私大入試・国公立2次試験にも役立つ「基礎から数学2Bを理解する勉強法」をご紹介していきましょう!

数学2Bはどうして難しいのか?

共通テストの平均点からも分かる通り、数学2Bが1Aと比べると難易度が大きく上がります。

それでは数2Bと数1Aでは何が違うのでしょうか?それらの違いが生まれる原因を考えてみると、どういう勉強法をすれば良いのかが見えてきます。

抽象的

数学2Bで扱う単元は、数学1Aよりも抽象的な考え方を用いなければいけません。

例えば三角関数の単元では、数1Aの三角比の時には直角三角形を元に与えられていたsinやcosの値が、直角三角形の辺の長さの比という定義を離れて、半径1の円(単位円)の座標によって定義されるようになります。

そうしてsinやcosの和や積を考える事になるわけですが、「直角三角形」というかなり具体的なイメージが失われてしまいました。そこに難しさがあります。

また、微分積分の定義には極限の考え方が出てきます。極限を本格的に学ぶのは数3なのにも関わらず、数学2の微分積分を定義するためには極限の考え方が一分必要なのです。

こういう事情から、イメージを掴みにくく、抽象的な印象を受けてしまいます。

解法=問題に対して取れる選択肢がとても多い

定義が理解しにくいとはいえ、解き方さえ暗記してしまえば問題を解くことは可能だと考える人もいるかと思います。

たしかに、数学の勉強を進めていく中で必ずやらなければいけないステップの一つに『チャート式』などの基礎レベルの問題集を使って、問題の解法を頭のなかに入れるというものがあります。

しかし定義が曖昧な状態でただ操作だけを覚えていくのは、定義を理解した上で問題を解くために必要な操作を頭のなかに入れていくのと比べると定着が非常に悪くなってしまいます。

更に困ったことに、数2Bでは覚えなければいけない解法が数1Aよりも多いのです。

例えば『青チャート』の数学1Aと数学2Bの問題数を比較してみると、数1Aが○○問に対して数2Bが○○問となっています。

この数字が覚えるべき解法の数と完全に比例関係にあるとは言えないものの、数学2Bのほうが数学1Aよりも沢山の解法を覚えなければいけないということはわかると思います。

基礎が大事

このような性質を見ると、数学2Bを難しいと感じる理由は定義などの基礎的なことをないがしろにしたまま、膨大な量の問題パターンと闇雲に向き合ってしまっているからだといえます。

難しいと問題を頑張って解いていても、解ける量も理解の程度も限界があります。

難しい数学2bだからこそ、定義を理解するために参考書や教科書を読みつつ、基礎レベルの問題をこなすべきなのです。

この章のまとめ

・数2Bが難しい理由は抽象的かつ範囲が広いこと

・だからこそ基礎をより重視しよう

勉強する際のポイント

数学2Bの勉強をする際には基礎を大事にしようということを前章で書きました。

それでは「基礎とは何か」、「基礎を大事に勉強する」というのは具体的に何をすれば良いのかについて説明していきたいと思います。

公式を導出できることが基礎を理解していること

「基礎を理解できているかどうか」を判断する簡単な方法があります。

それは、「その単元で登場する公式を自分で導くことができるかどうか」です。

例えば、等比数列の和 を求める公式は、

 rSn=      ra + r^2a  ・・・ r^n-1a+r^na

    Sn=  a+ra+  r^2a・・・    r^n-1a

と求める和に公比を掛けてその差を取ることによって求められます。

この公比rを掛けるという考え方は、等比数列と等差数列が組み合わされた

r+2r^2+3r^2+・・・nr^nの和を求めるというような問題に応用することができます。

このように、公式を導くための考え方は、他の典型問題の解法の基礎となっていることっが多いです。

教科書や参考書に出てくる公式の証明をよく読み込み、白紙に再現できるようにすることで基礎の理解が深まります。

余談ですが、過去に東京大学の入試で「三角関数の加法定理を証明せよ」という問題が出題されたことがあります。

一見簡単そうに思えますが、加法定理を丸暗記していた受験生の大半は解くことができなかったといいます。

基礎レベルの理解、すなわち公式を導けることが大切だということがこんな話からもわかると思います。

問題集は背伸びをしない

さて、教科書を読んで公式を導けるようになることが大切だという事はわかっていただけたと思います。

数学の勉強を進めていく上で、『チャート式』や『問題精講』シリーズなどの基礎的な問題を集めた問題集を解いて典型的な解法を覚えるというステップを踏むことが大切になってきます。

数2Bにおいても勿論『チャート式』などを解き進めていくことは大事なのですが、ここで気をつけて欲しいのは難易度を選ぶときに無理して難しい物を選ばないようにして欲しいということです。

『チャート式』であれば『赤チャート』を選びたいと思っても『青チャート』けや『黄チャート』を選ぶ。『標準問題精講』よりも『基礎問題精講』を選ぶというように心がけて欲しいと思います。

理由は2つ。1つは教科書を読みこみ、公式の導出をできるようにしたとしてもいきなり難しい問題を解くことは難しいということ。そのため数2Bで難しい問題集を選んでしまうと膨大な時間を費やしてしまいかねません。

またもう1つは数学2Bを難しいと感じているのはあなただけではないということです。受験生みんなが苦手な科目であるということがわかっているのですから、背伸びをせず易しい問題集をマスターすればそれで十分受験に通用するといえます。

(理系生向け)数学3を通じて復習する

また、数学3を学習する理系の受験生の方にオススメのポイントがもう1つあります。

数学3と数学2bの範囲は一部被ってくるため、問題集を解くときに無理に全部を解く必要は無いということです。

たとえば数学2bの積分の範囲は数学3の問題集にも必ず載っています。

私は『青チャート』の数学2Bの積分の問題を全て解くと時間が掛かり過ぎると思い、数学2Bの積分では問題を半分くらい飛ばしながら進めました。

それでも数学3を勉強するときに同じ範囲にもう一度触れるため、問題なく積分の範囲を身につけることができました。

また、極限の範囲を学習するときに数列が復習できたりといったようなことも期待できます。

このように、数学3を勉強する際に数学2Bの理解が必要になってくるので、数学3を通じて数学2Bを復習するつもりで勉強すると良いでしょう。

この章のまとめ

・教科書の公式を自分で導けるようにすると役に立つ

・問題集は難しい物を選ばないようにする

・数学3は数学2Bの良い復習になる

単元別ポイント解説

数学2Bの勉強全般におけるポイントのあとは、実際に勉強にする時に気をつける各単元別のポイントについてお話します。

三角関数で困ったときは単位円

三角関数の一番の関門は公式の多さです。前述のとおり公式は自分で導けるようになっていることが重要です。加法定理を導けるようになってしまえばそれを元に変形していくことで他の公式が得られます。他の公式を作る時の変形は確実に自分でできるようにしましょう。

他に三角関数の問題でよく間違えてしまうポイントは、関数の中身が変わっていくのに伴う定義域の変化を見落としてしまうということです。

0≦θ<πのときα≦θ+α<π+αとなりますが、αの値に応じてsin(θ+α)の最大値は変わっていきます。

こういった変化に対応できずに問題を間違えることがかなり多いです。

それを防ぐポイントは、三角関数の定義にもなっている単位円(半径1の円)を描きながら値の範囲を考えることです。

問題を解いている中で三角関数の中身が変わったら必ず単位円を書く癖をつけましょう。

指数関数・対数関数はグラフをすぐ書けるようにしよう

指数関数・対数関数は共通テストでこそそれ単体で出題されますが、記述式の試験では他の分野との融合問題で出されることが多いです。

数学3が出題範囲の理系大学では、微分積分と組み合わせた難問になることが多いです。

そのような融合問題でも、指数・対数関数単体の問題でも共通するのは「大小関係をすぐ把握できる」ことが大切だということです。

対数の底の値が1より大きいか小さいかとか、真数は正の値であるなど大小関係に関わる様々な情報が与えられるのがこの分野の特徴です。

数字の大小や増加、減少を判断するための一番手っ取り早い方法は「グラフを書く」ことです。

指数・対数関数を勉強するときはグラフを素早く頭にイメージし、書くことができるように練習すると問題が解きやすいでしょう。

微分・積分の計算量の多さを対策しよう

微分・積分は計算量が他の分野とは段違いに増える単元です。

特に共通テストでは時間に対して明らかに分量の多い問題が課されるため、最も難しい単元だといえます。

その計算量の多さにどう対応するかというのが大きなポイントとなってきます。

まず、計算量を減らす工夫が幾つかあるのでそれを上手く使えるようになりましょう。

また、自分がどういったところで計算ミスをするのかということを間違えた時に確認し、自分が間違えやすい計算は丁寧に行うというようにできるとミスが減っていきます。

理系受験生にとっては、数学2Bの微積分は数3で大きなウェイトを占める様々な関数の微分、積分へと続く幹のような分野です。

ここを苦手とすることがないように、しっかりと対策していきましょう。

ベクトルは図示or数式の見極めがカギ!

ベクトルは図形上の位置関係を数式に落としこんだものだといえます。

その性質上、図形とも数式とも切り離すことのできないものです。

ただ、問題によって図に表して整理したほうが効果的なものと、数式を変形しながら進めていったほうが良いものとに分かれます。

三角形や直方体の辺をベクトルとしている問題は図示することによってうまくまとまることが多いですが、空間上の直線の関係を考えるような問題では与えられた条件を数式にして変形していったほうがうまくいくことが多いように思います。(共通テストでは前者が圧倒的に多いので、共通テスト対策を考えている人は上手く図を書けるように訓練しましょう。)

問題ごとにこれらの見極めが上手くできるようになると、ベクトルの問題で高い得点を得られるようになると思います。

数列

数列は典型的な問題が多いというのが厄介なポイントです。

等差数列、等比数列といった全ての元になる2つの数列から、階差数列、群数列、部分分数など沢山の典型的な形式に派生していきます。

数列の問題を解くときには、その問題で問われている数列がどれに分類されるのかということがすぐ判断できることが大切です。

最後に

数学2Bが難しいのは扱う内容が数学1Aよりも抽象的であり身に付けるべき典型的な解法が多いためです。

そんな難しい数学2Bに取り組むからこそ、基礎的なところに立ち返り、公式をしっかりと導けるようにした上で易しめの問題集に取り組むことが大切なのです。

長い階段を登るからといって、2段飛ばし、3段飛ばしで登って行ったら怪我をしてしまいます。

数学2Bを勉強するときも、一歩一歩丁寧に勉強を進めていきましょう。